適正人数超過 子供が“あふれる”学童保育 善意も限界 浜松市
放課後だけでなく夏休みも子供の居場所
浜松市浜北区にある、北浜北小学校に設置された学童保育「すみれクラブ」と「すずらんクラブ」。
この日も朝から元気に活動する子供たち。
夏休みのような長期休暇期間は午前8時から、学校が始まれば授業が終わってから午後6時半まで読書・宿題・遊んだりして過ごします。
保護者
「働く上で家が不在になる中、安全・安心に預けられるところはここしかなく、とても助かっています」
共働き世帯が増加 ニーズ高まる
内閣府によると共働き世帯は年々増加傾向にあり、2017年は1188万世帯。
20歳未満の子供がいるひとり親世帯も、約86万世帯いて学童保育のニーズは年々、高まっています。
現在、浜松市で学童保育に登録している児童は6254人。
5年生
「学童保育に行かず1人で遊ぶよりも、みんなで一緒に楽しく遊べるので楽しい」
4年生
「ボードゲームや本など、いろいろあって楽しい」
学童”待機” 去年は全国ワースト4位
しかし、定員超過で入ることが出来ない、いわゆる「待機児童」は471人に上り、市町村別で全国ワースト4位となった去年よりも100人以上増えてしまっています。
浜松市教育総務課・齋藤美苗担当課長
「場所の確保は、学校内の余裕教室や特別教室などの活用を考えている。敷地内に施設が建てられる所であれば、新たな施設の建設も検討していかなければいけないと思っています」
利用希望の増加に反して、施設の整備が追い付かない現状。
こうした中、いま課題となっているのが学童保育の「大規模化」です。
「狭い」「蒸し暑い」適正人数超過の教室
厚生労働省は、1つのクラブあたりの適正人数を40人までとしていますが「すずらんクラブ」と「すみれクラブ」の利用者はそれぞれ55人。このため…。
4年生
「人数が多く、部屋のクーラーを効かせても蒸し暑くなる。もう少し人数を減らしてほしい」
5年生
「50何人いるので狭い」
その一方で…。
入口鎌伍記者
「こちらのクラブでは利用者の増加に伴い、家庭科室の利用も許可されているのですが、その家庭科室はと言うと…少し離れた場所にあるため、職員も分散させなければなりません」
善意は限界 指導員も不足
指導員不足は、どのクラブにとっても深刻な問題です。その大きな要因は「待遇面の低さ」。
ここ浜北区の場合はNPO法人による委託運営が実現していますが、旧浜松市内の学童保育では、指導員の時給は900円に届かず交通費の支給もない。いわゆる有償ボランティアです。
齋藤美苗担当課長
「地域の人の善意によって支えられている事業になっている。善意で支えるのも限界ではないか。浜松市としては今のやり方から民間事業者に委託という形をとって、指導員を正式に雇用してもらい、しっかりした身分保障のもとで運営に携わってもらえるようにしていきたいです」
国会では、指導員が不足していることを背景に今年5月、学童保育の運営基準を緩和する法案を可決。
厚労省は現在、1つのクラブにつき職員を2人以上配置することを義務付けていますが、来年4月からは市町村の裁量で職員1人でも運営が可能になります。
しかし、肝心の現場では…。
すずらんクラブ・冨田裕子主任
「1人体制は本当に考えられないことであり得ない。1人1人の子供の心に寄り添うという点で、1人体制では絶対にできない。複数体制で1人1人を丁寧にしっかり見ることが大切」
保護者
「クラブをまとめる先生たちも、1人では抑えられないという現状がある。常に2~3人の先生がいるから、なんとか成り立っている現状もある」
ケガをしたり、ケンカをしたり…小さなアクシデントやトラブルが付き物の学童保育。
指導員を減らすこと。それは、事故のリスクが増大する可能性を孕んでいます。
齋藤美苗担当課長
「指導員が1人しかいないと、子供に何かあった時に対応できなくなってしまう。浜松市としては安全を第一に考えたいと思っており、慎重に検討していきたい。指導員をたくさん雇用できれば、そういうことも対応できると思うので、基準を緩くするということよりも従事できる人を確保していきたいです」
大切なのは子供たちの安全が守られ、保護者が安心して児童を預けられる居場所作りです。
特に浜松市は「子ども第一主義」を掲げているだけに、長期的な視点に立った抜本的な解決策が求められます。